1.家を買う時の注意点、コンパクトな住宅に人気が集まる理由を解説
こんにちは『公認 不動産コンサルティングマスター資格保有者』 不動産業界歴23年・2級FP技能士 上越市の不動産会社「LIXIL不動産 上越中央店」の金丸です。
私が23年間、不動産業界にいて感じることの1つに、「大きな家」の人気がなくなりつつあり、「コンパクトな大きさの家」の人気が高まっているということがあります。
特に、若い方(20~40代)の方が、大きな家をさける傾向を感じます。
小さいお子様のいらっしゃる『3~4人家族』の方が、家を買うお手伝いをしているときに、以下のような意見を聞くことが増えています。
【家の広さ】
・『4LDK位あれば、いいと思う』
・『実際に見学したら、30坪の新築住宅は、思ったより広く感じますね!』
【土地の広さなど】
・『庭は必要ないけど、駐車場が2~3台欲しい!(地方都市ならではの事情)』
・『庭に木を植えても手入れ出来ないので、庭はいらない』
・『草むしりをしたくないので、土のスペースをできれば、全てコンクリートにしたい』
・『100坪とか200坪の土地は、管理が大変だし、固定資産税も高いので避けたい』
おそらく、親世代(60代以上)の価値観、「広い土地」に「大きな家」「庭がある」とは、正反対ともいえる家を求めているようです。
これから、『マイホーム』購入を考えている若い方は、合理的な考え方をしていますね!!
そして、私のお客様が『最終的なマイホーム』として選ぶ新築住宅は
①30~36坪程度
②土地面積50~60坪(新潟県の地方都市のため、首都圏よりは広め)
③4LDKの間取り(リビング14帖以上)
このような感じが多いです!
親世代とは、時代が変わりました。
なぜ、大きな家の人気がなくなっているのでしょうか?
まず、時代の変化があります。
①大家族が減っているため
→部屋数がそれほど必要ない
私(現在:45歳)が子供のころは、友達はだいたい3人兄弟でした。
加えて、おじいちゃん・おばあちゃんがいる6~7人家族が、割といました。
昔の家族構成なら5DKは、必要ですね!
私の子供(現在:小学校5年生)は、1人っ子です。
その友達も「1人や2人兄弟」が多いようです。ときどき3人兄弟もいますね。
3~4人家族なら、3LDKか4LDKで十分ですね。
②家で行事をしなくなり、客を家に招かなくなった
②家で冠婚葬祭などの行事をしなくなり、大勢の客を家に招かなくなったため
→お客さんと合うのは、喫茶店(スタバ・ガスト・コメダ珈琲でOK)
昔の家(築30~40年)の売出をさせていただくと、応接室がある家が時々あります。
立派な応接セットが置いてあって8帖位の洋室などです。
そういう私の家も、祖父や祖母が亡くなったとき(およそ30年程前)は、お坊さんを家に呼んで、親せきを集めて『家』で葬式を行いました。
8帖・8帖の続き間の和室に、祭壇を組んで、棺桶(ドライアイスを突っ込み)を置いて、大勢の人達を家に招いた記憶があります。
→今は、みんなセレモニーホールでOK
そして、県外から来てくれた「叔父・叔母」には、空いている客間に泊まってもらいました。
→今は、ビジネスホテルでOK
昔は、家でお客様の食事を作って、広い廊下を通って、広間へ『配膳』していたので、
「広いキッチン」や「広い廊下」は必要でした。
→今は、外食でOK
最近は、造り付けの『本棚』や『CDラック』が邪魔になるという現象が起きていますね!
そうです。
「kindle」や「Amazonプライム」など『本やCDの電子化』が進んだ結果、スマホやiPadがあれば、本やCDを持っている必要がなくなりつつあるためです。
自宅で、何でも済ませていた「昔」と違い「今」は、ほとんど『外の施設』を利用する様に時代が大きく変化しました。
これを『住宅のクラウド化』と呼ぶ方もいます。
③大きい家 デメリット
③大きい家は、維持管理(手間とコスト)が大変です!
【大きい家のデメリット】
◆掃除が大変
◆冷暖房効率が悪い
◆照明器具やエアコンなども無駄に必要
◆固定資産税が高い※
※固定資産税には「小規模住宅用地」の軽減措置という制度があります。
住宅用地として使用されている土地については、200㎡(約60坪)までは、固定資産税評価額の6分の1、200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで)については固定資産税評価額の3分の1を課税標準として税額が計算されます。
➡つまり、200㎡(約60坪)以下の住宅用地は、固定資産税が安くすみます。
土地の面積は、60坪程度に抑えると『節税』につながるとも言えますね!
もう一つ、頭の痛い問題があります!
◆メンテナンスは、面積が大きいほど比例してコストがかかる
当たり前の話ですが、外壁や屋根などメンテナンスコストも「大きい住宅」ほど、施工面積が広くなるため、コストが余計にかかります。
外壁や屋根などは、15~30年に一度は「塗装」または「増貼り・葺替え(ふきかえ)」などが必要になります。
・40坪程度の家で、70~230万円(塗装)となりますので、それが60坪の家なら1.5倍の費用となる可能性もありますね。
➡経済性においては、小さな家の方が『コスパ』が良くて、合理的です!
2.新築一戸建 3人家族に必要な広さを解説します
では、実際に日本の住宅事情は、どのようになっているのでしょうか・・・?
データを確認してみると
●建売住宅(首都圏)の平均床面積
平成20年:106.30㎡(約32坪)
平成30年:99.22㎡(約30坪)
出典:(株)不動産経済研究所「首都圏の建売住宅市場動向」による
➡『建売住宅』は、この10年間で『約2坪(たたみ4枚分)』小さくなっています。
●持ち家(中古含む・全国)の平均床面積
平成19年:131.60㎡(約40坪)
平成29年:120.50㎡(約36坪)
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」による
➡『持ち家(中古含む)』は、この10年間で「約6坪(たたみ12枚分)』小さくなりました。
新しい時代ほど『家が小さくなる傾向』がありますね!
そして、データが取れる限りの最新情報としては、
・最近の新築建売は、30坪程度が一般的
・最近の家(中古含む)は、36坪程度
これくらいの広さの家が『普通』なんだと言えますね。
私が、不動産売買の営業をしていて感じる大きさと、一致しています!
【具体的に計算してみましょう・・・】
私は、2LDKの一戸建(平屋)に、家族三人で住んでいたこともあります。
その時の一戸建ての大きさは、20坪(67㎡)でした。
子供が、3歳位までは十分でしたが、小学校に上がる頃には、もう一部屋欲しい(3LDK以上にしたい)と、考えて4LDKに移り住みました。
・家族3人で住むのに、最低限必要な広さが20坪かな・・・と感じます
《2LDK 内訳》
・キッチン:4帖(2坪)
・リビング:10帖(5坪)
・玄関 :2帖(1坪)
・トイレ :1帖(0.5坪)
・洗面室 :2帖(1坪)
・浴室 :2帖(1坪)
・寝室 :10帖(居室8帖+収納2帖)(5坪)
・個室 :7帖(居室6帖+収納1帖)(3.5坪)
・廊下他 :2帖(1坪)
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合計 40帖(20坪)
➡家族3人で最低限必要な面積は、やはり20坪だと思います!
ただし、子供の勉強部屋(個室)をもう1部屋欲しくなってしまいます。
上記は、『平屋』なので、6帖の洋室・階段を加えるとどうなるでしょう・・・?
上記 40帖(20坪)に加えて
・階段 :2帖(1坪)
・子供部屋 :7帖(居室6帖+収納1帖)(3.5坪)
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合計 49帖(24.5坪)
➡家族3人で『狭くない』面積は、24坪以上となりますね!
【注意点 ~新築住宅が 広く感じる理由~】
・もう一度、よく見てください!
上記の住宅には、廊下がほとんどありません!
最近の住宅は、廊下をなるべく作らない設計になっています。
そのため、コンパクトな面積ながら、リビングなど居室部分が広くなっているのです。
つまり
・築年数の古い住宅は、家全体の面積が広くても、廊下に使われていることが多い
理由:お客さんを『もてなす』ための、個室を作り、廊下から出入りする必要
料理をスムーズに運ぶなどの理由により、広い廊下が必要だった
そのため
・もしも、『中古住宅』を選ぶ場合は、一回り広い面積にした方が無難です・・・
『新築住宅』は、廊下がないので、30坪以下でも狭く感じませんが、『中古住宅』を同じ面積で考えて選ぶと、リビングなどの居室部分が狭くなってしまいます。
➡
家族3人で『狭くない』面積は、24坪以上となりました。
そこに
・子供部屋:7帖(居室6帖+収納1帖)(3.5坪)を加えると、4LDKになります。
家族4人で『狭くない』面積については、家族が集うリビングを、もう少し広くした方がいいと思います。
・リビングは、14帖(3人家族)ではなく、16帖(4人家族)くらい欲しいですね。
→リビング部分を2帖(1坪)広くします。
つまり、家族4人で『狭くない』面積は、24坪+3.5坪+1坪=28.5坪となります
➡家族4人で『狭くない』面積は、28.5坪以上です。
・最近の新築建売は、30坪程度が一般的
・最近の家(中古含む)は、36坪程度
・家族3人で最低限必要な面積は、20坪
・家族3人で『狭くない』面積は、24坪以上
・家族4人で『狭くない』面積は、28.5坪以上
とは言っても、その広さで快適に住めるのか?と疑問に思いますよね!
おそらく、もう少し広くして、何か加えると『日々の生活がもっと快適』になると思います。
例えば
【あると便利なスペース】
・ベビーカーを玄関にゆったり置けるような『シューズクローク』
・レトルト用品・お酒・水などをしまえる『パントリー』
・2階トイレ
・2階洗面台
これらを設置するとなると・・・
➡家族3人で『快適』な面積は、30坪以上
➡家族4人で『快適』な面積は、32坪以上
となります。
おそらく45坪位までは、広くするほど、快適度はUPすると予想出来ます。
(経済的には、30坪前後が一番コスパが良さそうですが・・・)
しかし、50坪以上に広くすることは、おススメしにくいです。
【理由】
①リビングは、20帖位だと『解放感』と『快適性』が一般的に高くなります。
20帖を超えるリビングは「冷暖房効率が悪く」「照明配置が難しく」
ホームパーティーをするとき以外は、ガランとしてかえって「落ち着かない」空間になってしまうケースがあります!
②将来もしも、売る場合に50坪の広さを求める人は少ないため、建築費に比べて、かなり割安にしないと売れなくなる可能性があります(売るときのコスパが悪い)
③維持管理(清掃・固定資産税)、メンテナンスなど、費用と手間がかかります。
結論:『3~4人のご家族は、30~45坪までの住宅がおすすめ』ですね。
家を買うにあたっての注意点 広さが優先とは言えません
住宅を手に入れる目的はなんでしょうか?
私は『自分(または自分を含めたご家族)が、今よりも良好な住環境を手に入れて、より幸せに生活できること』だと考えています。
マイホームを初めて購入する方は、新婚さん・初めてのお子さんが誕生する・お子さんが小学校に入学する前に・・・などの動機が多いのですが、
数年先の快適性は、もちろん『大事』です。
しかし、家は、メンテナンス次第で50年以上住むことが出来ます。
実は、お子さんと一緒に住む期間というのは、ご自身が家に住む期間の内の『ほんの一部だったりします・・・』
ただし、その『ほんの一部』の時間(18年位)が何よりも大切な時間でもあるのですが・・・
お子さんは、18歳くらいになると『進学』や『就職』などで巣立っていくことが多いです。
その時、家を建てた親である「あなた」は50歳位でしょうか?
そこから、ご夫婦2人だったり、とにかく老人施設や病院に入るまで、さらに30年前後住み続けることと思います。
そのときには、広い家は必要ありませんよね!?
50代は「どのような立地」の「どんな間取り」でも、なんとか生活できると思います。
しかし、70代になったときには、家の『広さ』よりも、『立地』の方が重要になる可能性が高いです。
【老後 家に求めるポイント】
・買い物(スーパー)などに近い
・病院に近い
・バリアフリー
・維持管理(草刈り・家のメンテナンスなど)がしやすい
おそらく、広すぎる家・立地の悪い家・維持管理が大変な家は、老後に後悔するかもしれません・・・
あなたにとって『どんな家が最適か?』は、ライフスタイルや価値観によって、それぞれ違います。
家を購入してから40~50年先のことまで考えた上で、この家にしてよかった。幸せな人生を送るための『手段』として、これで良かったと言えるかどうか・・・!?
これが『正解』と、言い切ることはできませんが、『広さ』以外のポイントも含めて、理想の住宅について、総合的に考えてみるのが良いのかなと思います。